最高裁判所第三小法廷 昭和26(れ)119 判決
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
弁護人前堀政幸の上告趣意第一点について。
原判決は所論のように、被告人が、Aに対し三〇万円の支払を請求することので
きる正当な貸金債権を、Bから譲り受け、その債権の実行として、本件五千円の交
付を受けたというような事実、あるいは、すくなくも右のような権利行使の意図の
もとに右金員の交付を受けたというような事実を認定しているのではなく、B及び
Cの依頼を受けて、同人らと特殊な関係にあると見られるAに対し、Bらのための
逃亡資金の調達の意味で、出金を要求し、五千円の交付を受けるに至つたものと認
定しているのである。原判決の摘示する被告人の原審公判廷における供述のうちに
は、多少右の認定にそぐわないところもあるが、それは被告人の弁疏にわたる部分
をも書き加えているためであつて、その全部を原審が措信した趣旨と解すべきでは
ない。そうして右の被告人の供述の外に、証人Aに対する原審受命判事の訊問調書
中の同証人の供述記載及び同人に対する司法警察官の聴取書中の同人の供述記載等
原判決が挙示する各証拠を綜合すれば、判示事実は十分に認定することができるの
であるから、原判決には所論のような違法はなく、論旨は理由がない。
同第二点について。
原判決挙示の証拠によれば、被告人が原判示のような目的で、原判示のようにA
を脅かして、五千円を喝取した事実を肯認できるのであつて、原審の右認定につい
てなんら経験則の違背は認められず、原判決に所論のような理由不備又は理由そご
の違法はない。論旨は理由がない。
同第三点について。
原審の認定するところによれば、被告人がAに対して出金を要求し、五千円の交
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付を受けたのは、所論のように「権利の行使として」それをしたものでないことは、
論旨第一点に対する判断においてのべたとおりである。そうして原判示のような被
告人の行為が、刑法二四九条一項の恐喝罪を構成することは疑を容れないから、原
判決の法津の適用に所論のような違法はなく、論旨は理由がない。
右の理由により旧刑訴四四六条に従い裁判官全員一致の意見を以て主文のとおり
判決する。
検察官 福島幸夫関与
昭和二六年五月八日
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 長 谷 川 太 一 郎
裁判官 井 上 登
裁判官 島 保
裁判官 河 村 又 介
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